悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence
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次に目が覚めた時、そこは見た事のある部屋。
神前が動いたのか……。
ホームドクターを務める、神前が動いたのだと把握して
ベッドの中から体を起こす。
近くには……アイツの姿があった。
「起きたのか……神威」
短く告げたアイツの言葉が、
今は優しくボクの中に広がっていく。
「とりあえず起きたら検査だと。
一通り、検査して異常が出なかったら退院だ。
遅くなって悪かったな」
事務的な口調で状況を説明した後に、
小さく隠れ見えたアイツの心。
「遅すぎる。
来るならもう少し早く来い」
照れながら勢いに任せて吐き出した言葉に、
アイツはムカつくことにボクを子ども扱いして
ワサワサと髪を掌で撫でつけた。
金色の雨。
黄金の龍。
今のボクは当主だけど、
何の権力も持たない子供でしかない。
徳力においての真の当主は、
雷龍翁瑛をその身に宿すこと。
本当の意味での当主になりきれないまま
海に還るのは嫌だ。