悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence
あの雨は……温かかった。
そして龍が降臨して吸い込まれた後、
俺の左手に小さく表れた……龍の刻印。
その刻印から漲る【みなぎる】力が、
傷口を癒していった。
「……良かった……」
由貴が安堵したように紡いだ。
「あぁ。
悪かったな」
ゆっくりと首を振って微笑みかける由貴。
「飛翔、裕さんにだけ声かけてきますね」
そう言うと、由貴は病室を出ていく。
今も隣で眠り続ける神威は目覚めない。
*
早く、目覚めろ。
*
そんな祈りにも似た感情を抱きながら
神威を見つめ続ける。
暫くすると病室をノックする音が聞こえて、
勇と裕さんが姿を見せる。
「早城、少し状態確認させて」
入ってきた裕さんは声をかけてすぐに、
俺たちを診察していく。
ベッドに横になってされるままに診察を受けた後、
体を再び起こした。
そのまま裕さんの視線は神威の方へ。
「あの……神威の状態は?」
「早城と一緒だよ。
氷室の情報だと、あるべきところの傷は何処にも見当たらなかった。
念の為検査はしたものの異常はなし。
後は目が覚めるのを待つだけだよ。
神威君が目が覚めるまでは神前で経過観察。
早城は、鷹宮に戻るなら帰っていいよ。
向こうには連絡しておくから。
勇人、後は頼んだよ」