悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence



「ったく、二人とも本当に似てるね。
 口数少ないところも不器用なところも」



クスクス笑いながら由貴は、
目覚めた神威の様子を調べて病室を出て行った。




「起きたのか……神威」

「とりあえず起きたら検査だと。
 一通り、検査して異常が出なかったら退院だ。
 遅くなって悪かったな」


事務的な口調とはいえ、
今の精一杯で神威と向き合う時間。


「遅すぎる。
 来るならもう少し早く来い」


いつもの様に無言の沈黙が続くだけだと思っていた
俺の傍で、アイツは可愛げなく上から目線で怒る。


そんなアイツを見ていると、
幼い時に、兄貴にそんな仕草をぶつけていた俺自身を思い出して、
兄貴が俺にしたように、気が付くと
アイツ髪をワサワサと掌で撫でつけた。

「飛翔、華月と万葉は?」

「華月はまだ入院してる。
 お前を助けようとして、康清一派に監禁された」

「監禁?
 華月は大丈夫?」

「華月のことも俺が動く。
 だからお前は子供らしく、もう少し寝てろ。

 小学生のガキが重たい荷物を一人で背負うんじゃねぇ。
 兄貴を……お前のお父さんを心配させるな」


「鷹宮のヤツラも由貴と時雨もお前の力になってくれる。
 総本家の方は、華月と話し合ってまとめていく。
 だから……せめて高校卒業するまでは荷物、おろせ。
 俺が動く。
 兄貴に……心配かけさせるな」





今の俺はアイツの代わりになることは出来ない。

そして兄貴の代わりにもなれない。



だけど……寄り添うとことは出来るだろう。





暫くして、もう一度姿を見せたときには
時雨と裕さんが一緒に姿を見せる。



意識が戻った神威は、そのまま診察と検査だけ受けて
俺と同じように、鷹宮へと移動が可能となった。



手続きを済ませて、鷹宮へと移動すると
特別室の仕度を勇が整えてくれていた。



再び神威をベッドに眠らせようとした時、
由貴が滑らした「俺の母親の入院」の言葉で
アイツが「早城にあいに行く」と突然、見舞いを申し出た。


慌てて母さんの病室まで付き添うと、
母さんは慌てたように、ベッドの上で正座をして頭を下げる。



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