悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence
10.神威の決断 護符への想い -飛翔-
*
「ボクはこの力をボク自身のものにして、
歩き続ける。
宝【ほう】の道が、宿命がなんてボクには難しすぎてわからないけど
今のボクは、夢の中の鬼を助けたいんだ。
その為にボクの力が必要なら、ボクはこのままでいい」
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神威自身が決断した覚悟。
アイツが兄貴たちの想いを越えて、
自分の足で歩き出そうとしているなら、
俺はそれを傍らで見守り続けるしかない。
そんなふうに思いながら見届けた。
だけどどうしたら、アイツを守ってやれるのか
そりが今の俺には思いつかない。
アイツが抱える問題は俺にとっては、非現実的すぎて
目に見える問題ではない。
一般常識の物差しではかれるものでない出来事と
向き合いながらアイツを守るには俺はどうしたらいい?
どれほど問いかけても今の俺には、
答えなんて見つからなかった。
来客を送りだして、神威を自室で眠らせてから
俺は自室に籠って、兄貴の残したものを机の上において見つめる。
小さな和紙に、見慣れぬ文字で描かれた札。
俺自身の人生の全てを変えた証。
肌身離さず、あの日から持ち歩いている護符を
手に取って見つめる。
アイツが覚悟を決めたってことは、俺も
自分なりの覚悟だよな。
手に取っていた札をいつものように片付けると、
ベランダの方に近づいて、そのままアイツらと一緒に
指導された、呼吸法を辿っていく。
一時間くらい集中して行った頃、
一本の電話が着信を告げる。