悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence
11.桜塚神社に宿る鬼 -神威-
その週は日曜が来て、何時もは寮に戻る時間になっても
ボクがマンションから出掛けることはなかった。
マンションに戻って、体調的には少しずつ落ち着いてきた気がする。
だけど……あの夢の感覚は、ボクにより強く訴えかける。
*
タスケテ
ボクガ
ボクデ ナクナル マエニ
*
そんな風に突き刺さってくる声。
そんな声を感じながら、
ボクは何度もボク自身の体を抱きしめた。
自室を出てリビングへと顔を出す。
「ご当主、いかがなされましたか?」
「万葉、飛翔はどうした?」
「飛翔さまはまだ鷹宮からお戻りになられていません」
「華月は?」
「華月様は階下の自室で華暁さまと過ごされています。
お呼びしましょうか?」
「別に構わない。
それより、ボクが見たあの夢の場所には何時行ける?
柊は何か言っていたか?」
気になっていたことをストレートに告げる。
「その件でしたら飛翔さまがお戻りの後、ご当主のお部屋を訪ねるところでした。
先ほど柊さまよりご連絡がありまして、今の現場の仕事が終わったので今宵にも
桜塚神社に向かいたいと連絡がございました。
ですが桜塚神社の気が一番乱れるのは夜が深くなるにつれて。
それ故に、夜の桜塚神社に出向かれるようです」
「わかった。夜だな。
ボクは夜まで支度をする。
飛翔が帰り次第、ボクの部屋へ通せ」
「畏まりました」
万葉に背中を向けて、ボクは再び自室へと戻る。
何時に出掛けるかなんてわからないけど、
今が10時だから、10時間後で20時。
夜が深いっていってたから、出掛けるのはもっと遅いかも知れない。
起きていられるかな?
ボクの夜更かしの記録は、まだ22時を少し超えるくらいだから
それ以上になったら、そんな心配がボクの中にわきあがる。
それを伝えて、仲間外れにされるのも子供だと笑われるのも
なんか許せなくて、ボクは内緒で寝貯めが出来ないかベッドに潜り込む。
だけどそんな時に限って、眼が冴えてしまって眠れそうになかった。
その30分後くらいにアイツがマンションに戻ってきて、万葉と話した後真っ直ぐに
近づいてくる足音が聞こえた。
ドアが開いて更に足音が近づいてくる。
アイツが傍に来てくれて嬉しいって言う気持ちをグッと堪えながら
寝たふりを決め込むボクの髪をアイツは撫でる。
そんなアイツの仕草に、幼き日に撫でられたお父さんとの記憶が浮かび上がってくる。
アイツの前では……やっぱりどれだけボクが飾り立てても、
我慢して虚勢を張り続けても瞬く間に素に戻してしまう。