悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence
「神威、起きてるだろ」
飛翔の声に、今起こされたと言う風に装いながら目を擦って起き上がる。
「おいおいっ。
今日、行くんだろ。あの夢の鬼に会いに。
たった今、華月とも顔を合わせたよ。
今日の外出、華暁と秋月の桜瑛ちゃんだったか。
あの二人も顔を出すらしいぞ。
桜瑛を呼んだのは、華月の娘って話だけどな」
飛翔の言葉に、今以上に眠気は吹っ飛んでしまう。
まさか、あの場所に行くのにあの二人が着いてくるなんて思ってなかったから。
せいぜい、飛翔・華月・万葉・柊そしてボクだと勝手に思い込んでいた。
「まっ、せいぜい乗り切れや。
俺もオンコールの後だから少し仮眠する。
お前も寝てろ。まだ病み上がりだ」
そう言うと飛翔は一度ボクの部屋から出て、
着替え終えると、ソファーベッドを引き出してゴロリと寝転んだ。
「眩しいからカーテンと電気は消すぞ」
そう言った途端、素早く遮光カーテンが閉じられて光は遮られて
照明も落とされた。
さっきまで眠たかったのに、魔法にかかったかのように次第にボクの意識は眠りの中に落ちていった。
次に目覚めたのは夕方の17時を過ぎた頃。
少し早めの食事をとった後、柊を迎えて桜塚神社に向かう前の清めの儀式を始める。
車で何時もの修行をしている場所まで出向いて、
清めの儀式を終えた後、ボクは華月に支度されていた真新しい着物に袖を通す。
飛翔はボクと同じ着物ではなく、スーツをかっちりと身に着けていた。
「さて、華月たちとの待ち合わせ場所に行くぞ」
柊・桜瑛・ボク・飛翔が身を清めた場所は、龍に連なるところしか入ることが出来ない聖域の為
華月たちは立ち入ることが出来ない。
よって、華月・万葉・華暁は別の場所で身を清めて合流することになってた。
待ち合わせのコンビニの駐車場。
それぞれの3台の車が揃ったところで、柊の運転する車を先頭に
ボクと飛翔、万葉・華月・華暁・桜瑛が乗る車が続く。
桜塚神社に到着したころには、外はもう真っ暗だった。
気は張っていたものの、少し舟を漕いでしまっていたボクは
眠い目をこすりながら不機嫌に顔をあげた。
「飛翔、何処?」
「あぁ、海神の近くだな。
もうすぐ目的地に着くぞ。
鞄の中に、濡れタオルを用意してる。
少し顔でも拭いて起こせ。
ガキ扱いされたくないんだろ」
アイツに言われるままにボクは、濡れタオルで顔をゴシゴシ拭くと
タオルをナイロンの中に片付けて、ペットボトルの水を一口飲んだ。
「風が欲しい」
告げるとすぐにパワーウィンドウがゆっくりと下がる。
少し生ぬるい風が、ボクの頬と髪を撫でつけていく。