悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence
華月たちと合流しようと思った時、
坂の方から、慌てて息を切らして駆けあがってくる足音が聞こえた。
「ご挨拶が遅くなりました。
徳力・秋月・生駒の神子様方に足をお運び頂いておりましたとは、
何事でございましょう。
当神社を任されています譲原咲久(ゆずりはら さくひさ)と申します」
この神社の神主なのか、譲原と言う年上の人が膝をついて挨拶する。
「咲、出てきなさい。
一緒に居るのは司君と一花君だね」
そして挨拶の後、更に隠れている気配の方に声をかける。
ご老人に促されて出てきたのは、女の子三人組。
「孫の咲とその知人です。三人とも、もう遅い。
家に帰って寝なさい」
ご老人の紹介の後、三人はぺこりと挨拶をして
そのまま坂を降りていった。
柊がこの地の神主に向かって、今この場所で起きていることを伝える。
この地の結界が弱まっていること。
その旨を伝えたうえで、これから結界修復の為、
何度か神社へ立ち入る旨の承諾を取り付けて、
再び、境内の方へと戻った。
戻ったその場所に、今もあの鬼の姿はない。
あの鬼は……今、何処にいるんだ?
桜塚神社に宿る鬼には今もまだ会えないまま、
ボクの動き出した最初の夜は終わっていった。