悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence
「咲久殿、その和喜と言うのは以前からTVを賑わせていた、
YUKIのことなのでしょうか?」
「YUKIと孫の大切な和喜が同一なのかは、儂にはわかりません。
ですが……今、儂に出来るのは、信じる者たちを案じ祈り続けることのみです。
どうぞ、この地をお導きください」
そのまま咲久殿は、深々とお辞儀をした。
譲原家を後にして、神社の方へと向かい
一通り、アイツが倒れていた場所を確認してヘリポートから本社へと戻り
そのまま午後からの仕事へ戻った。
その帰り道にも、次々と万葉の元に入る報告を受け続ける。
鷹宮での勤務につきながら、
ふとしたひょうしに、脳内はあらゆる情報の整頓に力が入る。
消えた桜塚神社の孫。
桜塚神社が騒がれ始めたきっかけを作ったアーティスト・YUKI。
突如、芸能界から姿を消したYUKI。
YUKIが移籍する前の、事務所トラブル問題。
その会社の社長令嬢・依子の存在。
その依子の存在も今は足あとを辿れない。
最後に、神威が夢を見続ける桜塚神社を守り続ける鬼。
断片的な情報に振り回されながら、
俺は必死に、この現実と向き合おうとしていた。