悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence
17.鬼の暴走 ボクの願い -神威-
「華月、調査の状況はどうなってる?」
ベッドから起き上がってすぐに、
マンションの最上階に顔を出していた華月に声をかける。
「ご当主、その前にまずは朝ご飯を。
朝食の後には、万葉が資料を揃えて参ります」
華月はそう言うと、テーブルの上に和食を並べ始める。
焼き魚・玉子焼・おひたし・煮物・味噌汁にご飯。
出されたそれらを黙々と食べ終えて、
再び声をかける。
「ごちそうさまでした」
両手を合掌して小さく声を出すと、華月に柔らかに微笑んだ。
「アイツは?」
「飛翔は朝からお仕事に行きましたよ。
今は飛翔も研修の身。
仕事に行ける時は行かないと……」
そうかっ……。
そうだよな。
ボクと違って飛翔には仕事がある。
アイツはそんなこと、微塵にも顔に出さないけど
華月の言葉は、それにすら気が付かなかったボクへの未熟さを
指摘されたような気がした。
「自分の部屋にいる。
万葉が来たら呼んでくれ」
「かしこまりました」
背中を向けて、早々に自分の部屋へと戻る。
今もボクの脳裏に大きく過るのは、
あの鬼のこと。
そして依子と言う女の存在。
目を閉じれば……精神を集中すれば、
あの鬼のことがもっとわかるかもしれない。
もう一度、あの鬼とコンタクトが取りたくて
自室の一角、床に座って呼吸をいつものように整えていく。
整えながら、一生懸命あの鬼のことを考えて思って
意識を繋げようと望むものの、
こういう時に限って思うように繋がらない。
何度も何度も繰り返しては、失敗ばかりする中で
来客を告げるチャイムの音が聞こえて、
すぐに華月がボクを部屋へと呼びに来た。