悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence


「失礼致しました。
 徳力・総本家の方でしたか。

 申し送れました。
 本官は八代【やしろ】と申します。

 この大雪の被害で、この地域一帯は雪崩がおこり道が塞がっております。
 至急、ヘリにて総本家の敷地へと入れるように致します」



そう言いきると、すぐに連絡を取り始めて、
キビキビ動き出す。



「飛翔、私も君が来てくれて心強いよ。
 今は何をやってるんだね」

「とりあえず今年、医者の国家試験を受けました。
 まだ合否はわかりませんけど、受かったら研修する病院も決まってます」

「こらっ、飛翔。
飯沼先生になんて口調してるんだ。
 先生は、今は……」

「早城君、そんなことはどうでもいいよ。

 今は私は政治家ではなく元教師と元教え子。
 それだけだよ」


養父たちのそんな会話を聞きながら
先生が今は政治家になったことを知った。



「飛翔、私も少しでも
 早く腰の重い上を動かせるように尽力する。

 徳力の当主がまだ見つからない。
 総本家のことは任せたぞ。

 徳力の力でこの一件の早期解決に協力願いたい」


「わかりました。
 本家の者と合流しだい早期対応させます」


先生との再会も早々に、到着したヘリに乗り込んで、
本家の敷地内に入り込む。


下の村を見下ろすと、あたり一面真っ白で、
着陸態勢に入ったヘリから見た故郷は、
雪崩によって埋もれてしまった地区。

雪の重みで潰れてしまった家屋が視界に止まる。



そんな想像以上の状況を目に留めながら、
ヘリはゆっくりと、総本家のヘリポートに着陸した。


再び雪が降り始める故郷。

ヘリポートから、
村のメインロードの方へと歩いていく道すがら、
養父が言葉を続けた。



「飛翔、……いやっ、今日からお前は総本家の人間だったな」



養父はいつもの口調で話しかけるのをやめて
一人、自身に言い聞かせるように呟く。



「飛翔様、村の者たちはこちらに避難させています」



村人たちにも解放されている総本家の敷地内の一角。

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