悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence
18.紅葉の秘密 -飛翔-
譲原咲の母親の自宅から、マンションへ戻る途中に
車内で眠りについてしまった神威。
どんなに生意気でも、どんなに頑張って大人の世界で生きようとしても
こいつはまだ小学生のガキには違いない。
一緒に暮らすようになって、コイツの無造作な姿を見ながら
少しホッとする俺が存在した。
車内の洋楽の音量を少し絞って、夜の道を愛車で駆け抜ける。
その途中、華月から一本の電話が入った。
須王依子の父親からコンタクトがあったこと。
『逢って話したい』っと申し出があったこと。
徳力の一族が、今回の一件のことを調べていることが
何処からかの情報網で相手に入った状態だった。
思わず助手席で寝息を立てる神威を見る。
多分、コイツが起きていたら『行く』と宣言するだろう。
「わかった。
華月、メールで詳細を添付してくれ。
後、その現場に一番近いホテルを予約してくれ。
このまま直行して、今夜はホテルで休む」
予定を変更して、マンションへと向かっていた車を
次なる目的地へと方向転換させて走らせていく。
30分ほど走らせたところで華月からのメールが着信を告げ、
予約されたホテル名と、調査資料が添付されてきた。
ホテルの駐車場に愛車をとめて、チェックインを済ませると
神威を抱き上げて、そのまま部屋の中へと入る。
アイツをベッドで寝かせるとノートパソコンを立ち上げて、
鷹宮の電子カルテを確認して状況を確認すると、
今度は華月からの添付資料の確認を始める。
そこには須王グループが倒産した後、辿った末路が綴られていた。
*
7月10日 現在
家族関係
・須王啓二【すおう けいじ】54
・須王慶子【すおう けいこ】56
・須王依子【すおう よりこ】17
調査内容
6月20日 啓二・慶子離婚。
依子の親権は啓二。
7月 依子と咲の対人関係に亀裂
7月15日 YUKI トパジオスレコードに移籍
7月16日 ルビーレコード倒産
依子 聖フローシア学院退学
同日、自室で倒れているところを父親に発見。
現在も意識が戻らない。
*
そう言った内容が事細かに記されていた。