悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence
20.雷龍 翁瑛 -飛翔-
目が覚めた場所は鷹宮だった。
夜中、目が覚めて起き上がった途端に
ベッドサイドのソファーに座ったまま眠りにつく由貴の姿が視界に映る。
また……心配かけちまったか……。
腕に刺さったままの点滴の針を抜いて、
掛布団を由貴にかけると、モゾモゾとアイツは動いて目を開けた。
「飛翔……アナタと言う人は……」
真っ直ぐに見据えて睨み付ける表情と変わって、声だけは不安の色を伝えてくる。
「悪かった」
「神威君は心配いりませんよ。
朝まではぐっすりのはずです。
少し安定剤を入れて、休ませていますから。
ご心配なら、隣のベッドに」
「いやっ、別に構わない。
今は由貴に任せるよ」
「飛翔の方はどうなんですか?
何処か痛いとか、何かないんですか?」
由貴に問われて俺自身に意識を向けるものの、
それといって思い当たるものはない。
「いやっ、別にないな。
しいて言えば、のどが乾いた……くらいか」
俺が答えると由貴は呆れたようにホッとしたようにようやく笑顔を見せた。
「少し病室の外に出ていいか?
神威を起こしたくない」