悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence
寄り合いなどに使う、
コミュニケーションセンター。
すでに何人かが動き出して炊き出しの支度や、
避難してきた人たちの世話が始まっている。
「養父【おやじ】、現在の状況は?」
「現在、当主後見は下の小学校のほうの避難所で
陣頭に立っておられます。
秋月、生駒からも応援が来ています」
「わかった。
養父はここの責任者と指揮を。
俺は下で後見と合流して当主を探す」
その場で携帯電話を取り出して、
由貴に電話をかける。
アイツはすぐに電話に出た。
「もしもし。
飛翔、そっちは?」
「悪い。
勇に代わってくれるか?」
慌しく、そういったその言葉の後、
少し反響する声が聴覚を刺激する。
「飛翔?
どうかした?」
「勇、伊舎堂の……。
神前(こうさき)の力借りれないか?
神威が……。
俺の甥がまだ見つからない。
怪我人も多いがこの村には総合病院はない。
被災者のケアーを最優先したいんだが、
医者や看護師の人手がないんだ」
「その件は心配しないで。
お養父さんが連絡して、
裕兄さんたちが動いてくれてるから。
僕と由貴も今、神前に向かってる。
だから飛翔も無茶しないで」
勇と話しながら俺の足は、
後見の指揮をとる避難場所へと進んでいく。
「飛翔ちゃんと帰ってきてくださいよ」
電話を切ろうとした間際、
由貴の声が聞こえてブツリと切断した。
とりあえず神前が動けば、
医療面では十分だろう。
記憶の中にある小学校の校門から、
中に入り込むと避難所の炊き出しや、
情報収集に奔走している
従姉妹の姿を確認する。
真っ黒の長い髪を後ろで一つに結わえて、
小学校内を走り回ってる。
華月(かづき)がこっちに駆け寄ってくる間際、
手だけ、スッとあげる。
昔からの、
いつもの挨拶。
振り乱した髪を気にせぬままに、
口元を両手で覆って信じられないと言う様に
俺を見つめる従姉妹。