悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence




その答えは、もう一人の珠鬼と言う鬼が教えてくれた。



紅葉は、風鬼と呼ばれていたその人の婚約者だったと。
そして結婚式をあげる日に亡くなったのだと。




その死が、桜鬼自身がもたらせたものだと
あの鬼の悲鳴が、意識の中へと流れ込んできて、
ボクは思わず足に力を入れて踏ん張る。




「神威どうした?」

「少し疲れただけ。
 でももうすぐ謎が解けていく気がするから」



更に意識を重ねていく。




『あの日のようにお前の大切な存在を殺すがいい。 

 私の可愛い傀儡よ。

 二人とも、アレを殺しなさい。
 私の願いを叶えなさい』



紅葉が告げると、依子と咲は徐々に桜鬼の方へと歩いていく。



桜鬼が自らの鞘から解き放った剣を手にしながら、
覚悟を決めたように、依子と愛する少女を見据えた。





飛翔を振り払って、ボクは指文字を描きながら
駆けだそうとした時、桜鬼はただ一瞬、ボクの方に視線を向けて
首を静かに横にふる。







ボクに任せて……。
これはボクの最期の務めだから。






そんな声がボクの体を呪縛して、
前へと進むことが出来なくなった。


動けないボクは、ゆっくりと印を結んで金色の鳥に
桜鬼の想いを宿す。


彼の想いが言霊となって、あの咲の元へと届いて欲しいから。



流れ込む桜鬼の想いを言葉にして、何度も何度も金色の鳥に向かって
紡ぎ続ける。

そんなボクの隣、印を結ぶボクの手を包み込むように桜瑛も自らの両手を重ねて
同じ言葉を紡いでいく。








咲……一人じゃない。
だから悲しまないで。


悲しまないで……。






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