悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence
夢見が悪くて迷惑をかけてしまうから。
メイトロンにそれだけ告げて、
ボクは一人別室で眠らせて貰うように頼み込む。
最初は渋っていたメイトロンも、デューティーかグランデューティーが一緒ならと
了承してくれた。
あの日から、何度も夢に魘され眠れないままに
終業式、当日を迎えた。
「神威、今日で終業式だね。
三学期、大変なことがあったけれど、
四月から、また一緒に過ごせるのを楽しみにしているよ」
そう言ってデューティーに見送られたボク。
前日、アイツから寮に「明日、迎えに行く」っと連絡があった。
ほんの少し、アイツに逢いたいと感じたボク自身。
あんな夢を見続ける今だから?
どれだけ心が否定しても、
アイツの中に、懐かしい父さんの面影が残っているのは確かだから……。
「ご当主、遅くなり申し訳ありません。
お迎えに参りました」
「八重村、元井、日暮。
今日は、飛翔が迎えに来ると聞いていた」
「飛翔様は手が離せなくなり、
私共がかわりにお迎えにあがりました。
どうぞ、ご当主。お車へ」
アイツが迎えに来るのを期待したボクがバカだった……。
八重村たちの車に乗り込んだボクは動き出した車内で、
何かを押し付けられて、意識を失った。
今も……雨の音が、やけに耳に響いていた。