悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence
11.静かな雨 -由貴-
四月一日。
鷹宮総合病院で始まる研修医としての初日の朝、
勇からの電話で知らされた、昨夜の、飛翔のお母さんのは救急搬送。
それを知った途端、心の中に広がったのは、
残酷なまでに飛翔を追い落とす神様への怒り。
*
どうして……神様は、
そんな残酷な試練を簡単に与えてしまうのでしょうか……。
*
時雨の身に今も降りかかっている運命を感じながら、
新たな運命に翻弄されていく、飛翔を思う。
飛翔の母校でもある、昂燿校の終業式。
神威君が行方不明になっているのを、
私は時雨から聞かされた。
そんな神威君の行方を、時雨は仕事の合間に捜索している。
今回の一件にしても、神威君の一件にしても
私は直接、飛翔から知らされていない。
そんな寂しさが、心の黒い影を生み出す。
今はまだ……私自身が頼りないから……。
そう納得させるように自分に言い聞かせて、
朝食を済ませると、鷹宮へと愛車で向かう。
何時も通いなれた病院なのに、いつもと違う朝。
医局に集められた私たちは、
その日から、研修医としての生活が始まる。
勇・千尋君・知成君・史也君、そして……飛翔と私。
顔の知った存在が、一同に医局に集まると
ちょっとした和んだ空気が広がっていく。