悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence
12.雨の記憶~後編~ -神威-
終業式の日。
寮の前でアイツに依頼されて、迎えに来た奴の車に乗った。
そうして連れられた場所は、総本家の敷地の中に存在する、
誰も立ち入ることが出来ない奥の間と呼ばれる場所。
あの日から何日も何日も、
その場所に閉じ込められるようにして過ごし続ける。
「ご当主、朝の膳をお持ちしました」
いつもの様に、日暮が膳を運んではテーブルへと置く。
「日暮、ここに来て一週間近くになるが
後見は何故、姿を見せない。
当主であるボクがどうして、
このような場所で身を隠すように生活しないといけない?」
鋭く指摘するように告げるボクに、
日暮は何もなかったかのように、一礼をして部屋から立ち去る。
立ち去る間際、外から鍵がかけられる。
この奥の間から抜け出そうと、
手当たり次第の重たそうなものを窓ガラスに投げつけてみるものの
窓が割れる気配はない。
空調がしっかりときいた空間に、
強化ガラスが太陽の光を運んでくる。
居心地の悪い場所ではないけれど、
息苦しさを感じる、窮屈な空間。