悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence
17.優しい雨 -由貴-
飛翔が語った過去は、
私の想像以上のものでした。
幼い頃から、寂しい思いをし続けた
その心は……遠い日の私にもシンクロする。
仕事ばかりで、
家を留守がちにした両親。
両親が留守がちなだけでも寂しかったのに、
両親が村人たちに殺された辛さを抱えながら
現実を生き続けるのはどれほど辛かったでしょうか?
私には……時雨が居ました。
時雨と時雨の双子の弟である氷雨。
二人が支えてくれて時雨たちの両親が、
いつも自分たちの子供のように接してくれた。
だけど飛翔は、その唯一の支えである
お兄さんにすら、見放されたと心に深い傷をつけたまま
早城家に養子入った。
出会った頃から気になってた
早城のご両親と飛翔の関係のズレ。
そんなパズルのはまらない原因が
わかった気がした。
他人行儀な親子関係の原因は家柄。
総本家と分家。
その二つの縛りが、
こんなにも世界を遮断していくなんて。
そして……それは、
今も神威くんと飛翔の間に根付いてる。
飛翔は……神威君に、
ご両親や兄さんがしてきたような犠牲は
背負ってほしくないと願ってる。
それと同時に……本来は、
その責を背負うのは神威くんの前に
自分自身であることを一番知っている。