悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence
その罪悪感が先に立ちすぎて、
視野を狭くさせてるのかも知れない。
一方的な思いをどれほどに押し付けても、
相手を苦しめるだけなのに
それすらも、気が付けずに。
そして……もしかしたら神威君もまた、
飛翔を守ろうとしてるのかも知れません。
飛翔を冷たく突き放して
総本家に関わらせないようにしている。
飛翔は、今は分家の末端の人間。
もしかしたら……お父様である、
飛翔のお兄さんがどうして、
飛翔を分家に養子に出したのか
大人の世界で強く揉まれ続けた彼は
気が付いたのかも知れません。
こんなにも思いあって響きあっているのに
決して相容れることのない不器用な形。
目に見えず、
言葉にしていないからこそ、
水面下でぶつかり合う感情は、
次々と相手を傷つけていく。
飛翔は……黙ったまま、
お兄さんからの手紙をじっと見つめている。
「……飛翔……。
それで貴方はどうしたいのですか?」
静かに言葉を続ける。
ここで飛翔の心をまた閉じさせてはいけない。
私の心がそう告げるから。
覚悟のメス。
貴方を追い詰めるであろうと知りながら
あえて……言わせてください。
互いを思いあいながら自滅していく
二人をこれ以上見ていたくないから。