悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence
「……別に……」
言葉を紡ぐんで、本性を出さなくなった
飛翔の頬を思いっきり掌で打つ。
「飛翔……。
貴方の言葉は飾りですか?
言いたいことがある。
貴方の表情は、目は何かを語りたげですよ。
目は語りますが、目だけでは
全ては伝わりません。
吐き出せない言葉は思いだけであって、
考え、決意に至ってません。
飛翔の中では私が言わなくとも
心はすでに定まってますね」
穏やかな口調でありながら、
一言一言に力を込めて。
こんなにも冷静に紡ぎ続けられるなんて、
私自身も驚くほどに言葉がスラスラと飛び出してくる。
「あぁ。
神威は助ける」
短いけれど、
そう言い放った飛翔の一言は
とても力強かった。
「神威は助ける。
それが兄貴の優しさに報いるための
俺のすべきこと。
あれには、まだ未来がある。
だが……」
「だが?」
飛翔が告げようとする言葉の
正体を感じながら、
あえて……飛翔の言葉で
吐き出させようと語尾をリピートする。
暫くの沈黙の後、飛翔は再び、
言葉を紡ぎはじめした。
「アイツは……あのガキは俺を許さない」
「飛翔、貴方がそう思う根拠は?
神威君が、貴方に向かって自分の声で
はっきりと告げたのですか?」
自らの意志で、しっかりとした口調で
飛翔を否定したのであれば、
今のままでは関係の修復は難しいのかもしれない。
だけど……飛翔の話だを聞いていると、
飛翔と神威君の間には、二人が近づくのを快く思わない
そんな人物がいるようにも感じられて……。
もしかしたら……神威君は、
マインドコントロールをされている可能性も
否定は出来ないように思えるから。
昔から、飛翔のような古風な家柄に生まれて
その家の都合のいいように操られるように教育されてきた。