悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence
医局内が出勤してきたスタッフで
賑わいだした頃、マナーモードにしていた携帯が
ブルブルと着信を告げた。
慌てて掴み取って開くと、
液晶画面に表示されているのは『金城時雨』。
慌てて通話ボタンを押す。
「由貴かっ、仕事中に悪い。
飛翔、見つけた。
探すのに手間取って悪かった。
飛翔から託されてたデーターに書かれてた土地で
目星をつけた場所を順番にまわってた。
飛翔、脱水起こしてると思う。
こっちの病院、探して運び込んでもいいんだけど
飛翔の家柄もある。
表沙汰にはしたくないだろう。
そう思って、そのまま走ってきた。
頼む、僕は鷹宮まで飛翔を連れ帰るから後はそっちに任せるから。
後、10分で着く」
時雨は用件だけ伝えると、
そのまま電話を切った。
「どうした?
氷室、早城からか?」
談笑していた嵩継さんが、
話かけてくれて、パニックに陥っていた思考がクリアになってくる。
「嵩継さん、警察の知人からの電話で
飛翔が脱水起こしてこっちに向かってます。
詳しい話はまだ私も把握できてないんですが」
「了解。
氷室、お前はオレと来い。
早城迎えに行くぞ。
聖也さん、すいません。
後の奴ら、面倒お願いします」
「うん。
こっちは僕が受け持つから。
嵩継は早城処置して合流して。
一応、院長の耳には入れておかないとね。
連絡しておくよ」
医局を飛び出していく嵩継さんの後を追いかけるように
私も病院のエントランスへと向かう。
途中でストレッチャーを準備して、
エントランスに到着したと同時に時雨のCIMAが
ロータリーに滑り込んで停車する。
運転席から降りてきた時雨がドアを開けるよりも先に、
助手席を開けると座席をべったりと横に倒して横になっている飛翔を
ストレッチャーへと移動させて、処置室へと運び込んだ。
次から次へと声が飛び交って処置が始まっても、
思うように動けない私に変わって、
何時の間にか処置室に姿を見せていた勇が嵩継さんの指示に従いながら
動いていく。
とりあえず一通りの処置が終わって飛翔は、
部屋をとって休ませることになった。
今も輸液中の飛翔の病室には、今も時雨が付き添う。