片思い卒業証書
「でも俺、そう思ってたけど無理だった。彩愛と離れるなんてこと考えたら嫌でしかなくて、これからもずっと一緒に居たいって思ったんだ」
そこで篤志は深く息を吐いた。
今日までにあたしのことを真剣に考えながらも葛藤していた様子が、ちらちらと窺えた。
「なあ、彩愛は覚えてるか? 幼馴染みはいつまで一緒に居られるかっていう話をしたこと。小さい頃のことだけど……」
篤志が言っているのはもちろん、あたしが信じてきたあの言葉を聞いた日のことで。
覚えていたのがあたしだけでないことに驚いて、小さく頷いた。
そうすれば篤志は嬉しそうに笑った。それは自信満々にあの言葉を言ってくれた笑顔と重なる。
「あのときに俺、一緒に居ようと思えばずっと一緒に居られるみたいなこと言ったけどさ。正直今は、一緒に居たいっていう思いだけで幼馴染みは一緒に居られないと思ってる」
「……うん」
篤志の言葉は正しくて、あたしは静かに頷いた。
小さな希望にしがみ付いていた頃とは違って、今は願うだけじゃダメなことはお互い分かってる。
現にあたしたちはこれから、別々の道を進んでいく。
一緒に居たいとあたしは思ったけど、それだけでは一緒に居る未来を手にすることが出来なかった。
これからのことを考えると不安が残るけど、それはいつかと同じように迷いのない言葉が掻き消してくれる。