片思い卒業証書
「……だけど、俺らはもうただの幼馴染みじゃない。そりゃあ両思いなら一緒に居られるってわけじゃないかもしれねえけど、俺は少なくとも幼馴染みよりはこれからも一緒に居られると思う」
篤志の瞳があたしを射抜くように真っ直ぐ見つめた。
……あたし、この真っ直ぐな目が好きだ。
時々、驚くほどに大人びる声も。
そういう好きなものが、当たり前だけど離れ離れになれば側から消えてしまう。
篤志の言葉は嬉しいはずなのに、それを考えるとまた泣きそうになってしまった。
そんなあたしの様子に気付いたのか知らないけど、篤志は前髪をかき分けて額に唇を押し付けてきた。
驚いたおかげで、涙なんて一瞬で引っ込んでしまう。
「大丈夫……だから、泣くなよ」
驚きながら覗き込んだ篤志の瞳が、一瞬だけ揺らいだ気がした。
だけどあたしを慰めるために、口角を上げて笑っていた。
……ああ、そうか。
寂しいのも、不安なのも、二人共一緒だ。
ずっと一緒に居たいっていう思いの大きさが同じ分だけ、その陰に強がって隠した感情が燻っている。
「……大丈夫だよ。泣いてないもん」
篤志の手を握りながら、自分にも言い聞かせるようにそう言った。
久しぶりに触れた篤志の手は大きくなっているどころか硬くなっていて、すっかり幼い頃とは変わっていた。
夢を掴むための手は、とても温かくて安心出来る。
篤志はあたしの存在を確かめるように、手のひらや甲を優しく撫でていた。