片思い卒業証書
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――話があるから、卒業式が終わったら教室で待ってて。
篤志にそう言われたのは、今日の朝のことだった。
そしてあたしは言われた通り、今一人で自分の教室に残っている。
今日、あたしと篤志は高校を卒業した。
厳粛な雰囲気で執り行われた卒業式も、涙と笑顔で溢れたクラスでの最後のホームルームも。
何もかもが、実感を抱く前に終わっていってしまった。
そうしてすっかりクラスメートが居なくなった教室で、窓際の自分の席からグラウンドを見ていた。
グラウンドでは記念写真を撮る人や、打ち上げに行こうと集まっている人たちが、ざわざわと盛り上がっている。
本当ならあたしもあそこに混ざっているはずだけど、篤志から呼び止められているので行けない。
篤志、まだかな……。
ホームルームが終わってから、もう20分ぐらい経っている。
あたしのクラスは案外あっさりと終わったけど、篤志のクラスはまだ先生が話しているのかもしれない。
それか、友達に足止めをくらっているか。
頬杖をついて覗き見た人だかりには篤志と同じクラスの人は見当たらなかったから、きっと前者が理由だろう。
「……」
そういえば、高校の三年間では一度も篤志と同じクラスになれなかったなあ。
篤志を追いかけて入った学校だけど、そんな甘い考えのあたしなんてお見通しのように、篤志とはいつもクラスが離されていた気がする。