捨て猫にパン
「オレは言ったよね?今も変わらない。でもさ、真琴は?真琴は声が聞きたいとか会いたいとかの他に、大事な感情は見えないのか?」


…見えてるよ…。


あたしの中には、いつだって倉持さんがいて。


陣と歩いてても。


陣に抱かれてても。


心の奥には、ずっと、ずっとあなたがいました。


“好き”の気持ちのベクトルは何度修正してみても倉持さんにしか向かなくて。


なのに会えないあなたに。


寂しさ。


切なさ。


苦しさ。


そればかりが膨らむ。


気持ちをはぐらかそうとすればするほどあたしの胸には張り裂けそうな痛みばかりが残って。


手の甲は傷ついて。


溺れるほどに辛い。
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