捨て猫にパン
「真琴」


「ハイ…」


「オレを見て」


静かな声に、マグカップばかりを見つめていた視線を上げる。


「聞かせて。真琴の一番大事な想い」


「あたしは…」


「うん」


ダメ。


これ以上言ってはいけない。


あたし1人がどんなに苦しもうがかまわない。


だけど、陣は。


陣だけは傷つけたくない…!


「真琴?」


「あたしは倉持さんのことが…好き、です…」


「なのに、なぜ?」


「…え…?」


「なぜそんなに自分を孤独の奥に押し込むの?」


それは…。


それは陣を、あんなに想いをくれる陣を傷つけたくはないから。


指きりげんまんしたあの約束を嘘にはできない。


心を体を誓った、陣。


そんな陣に罪はないんだもの…。
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