捨て猫にパン
「やめないよ。真琴が真実に目を反らし続けるなら、オレはやめない。誰かを悲しませるとか、約束を踏みにじるとかの前に、自分の心を見ろよ。傷ついた自分の手を見ろよ。一番かわいそうなのは誰だ?自分の口先だけの嘘の愛に振り回されているのは?わかってるだろ?

真琴、まだ心に痛みを感じるだろ?手遅れになる前に、その痛みを癒やそう。それができるのは、その涙を拭えるのは、オレだけなんだよ」


わかってる。


そんなの、全部、全部わかってる。


嘘も。


傷も。


痛みも。


誰よりもわかってるのは、このあたし。


でも、その十字架を背負わなければならないのも、このあたし。


嘘を塗り重ねてでも、あたしは守らなければならない。


陣との約束、陣の愛。


この右手のリングに誓った覚悟を。


守らなければいけないんだ…。
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