捨て猫にパン
「陣…」


そんなに先を行かないで。


やっと掴みかけた陣を見失ってしまう。


傍に、って。


置いてきぼりにしない、って言ったじゃない…。


こんな所で1人は嫌だよ…。


冷たい鏡の中じゃ、陣を見つけられない。


鏡の迷路。


あたしは進んでいるのか、同じ所をぐるぐる回ってるのかそれすらもわからず、膝をかかえてうずくまった。


きっと迎えに来てくれるよね?


待ってていいよね?


信じていいよ、ね…?


あたしはミラーハウスの中で1人しゃがみ込んだまま、ただ陣を待つ。


きっと来てくれる。


「真琴、ホント方向音痴なんだな」


って。


笑って手を差し伸べてくれる。


手を───………。
< 115 / 127 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop