捨て猫にパン
陣じゃないの…?


寒いよ…冷たいよ…。


この手を、心を温めてほしい。


あたしは何を、誰を求めてるの…?


わかんない…。


わからないよ…!


あたしはやみくもに迷路の中を歩く。


幸せの答えを求めて。


陣?


倉持さん…?


ダメ。


どうしようもなく迷ってしまう。


突き放されてようやく気付く自分の迷い。


この迷い、陣には見えてたんだ…。


ねぇ、陣。


陣はあたしといて苦しかった?


キスをしても、肌を重ね合っても寂しかった?


だったら…だったらあたしと同じだったんだね…。


2人じゃ何も埋め合えなかったんだね。


ごめんね、陣。


ごめんなさい…。


あたしは涙で歪むケータイの画面を操作する。


そう。


あたしの答え。


臆病な猫の飼い主になってくれるのは。


最初からこの人だったんだ───。
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