捨て猫にパン
『もしもし?』


「あたしです…。あのね、出られそうなのに出られないの。見えたのに掴めないの。今すぐあなたの手が欲しいんです。お願い…来て…!」


『どこ?』


「遊園地の…ミラーハウスの中…」


『待ってて。すぐ行く』


鼓膜を包む静かな声。


いつだってあたしの心の中にはこの人がいて。


いつだって“すぐ行く”って返事をくれて。


そして、今、迎えに来てあたしの手を握ってくれるはず。


この涙を拭ってくれるはず。


これがあたしの答えなんだよ、ね?


もう間違っちゃいけないんだよね?
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