捨て猫にパン
「陣…。いっぱい、いっぱいアリガ…」


「ちょい待ち」


「…え?」


「もう言うな。俺、泣いてすがるかもよ?」


「陣のガラじゃないね?」


「だろ?ホラ、真琴。もう行けよ。待ってんだろ?アイツ」


「…うん」


「元気で、な」


「うん。陣も」


軽く手を振る陣。


お互い“バイバイ”は言わずに別れた。


言ってしまうと泣いてしまいそうだった。


陣も。


あたしも。


それぐらいあたし達は大切な時間を重ねたから。


その時間は。


“自分に正直になるため”の時間。


あたしはかけがえのない人を追う時間。


陣は大事にしてくれたあたしを送る時間。


止まった時が。


やっと動き出したんだ。
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