捨て猫にパン
ねぇ、要さん。


臆病な猫は、ね。


この手がなくちゃ、繋がれた手がなきゃ、すぐに迷子になるの。


不安に押し潰されて泣き虫になるの。


だから、ね?


あたしを離さずにいて、ね?


「要さん…?」


「ん?」


あたしを見下ろす要さんにキスをする。


晴れた笑顔がそこにある。


痣の消えた手の甲はしっかりと繋がれて。


どこまでも高い青の空は、あたし達を祝福した。
< 126 / 127 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop