捨て猫にパン
「オレ、明日休みなんだ。車で送るよ」


「?」


「痴漢同様、オレもイヤなら話は別だけど」


「いえっ!そんなことはないですがっ!」


「…が?」


「今日、助けていただいたばかりで、その上明日送っていただくなんて、それは、ちょっと…」


「助けたどこの馬の骨ともわからん男を一人暮らしのアパートに招く方が、オレ的には大胆だと思うけど?」


ぐ…確かにおっしゃる通りでございますが…。


「朝、渋滞で混むから、早めに迎えに来るから」


「でも…」


「コーヒー、ごちそうさま。手、噛まないようにね」


それだけ言って、倉持さんは少しネクタイを緩めて笑い、ポカンとソファーに座ったままのあたしを置いて、部屋を出て行った。
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