捨て猫にパン
───………


「…琴。真琴?」


「ん…。あ…。駅ですかっ?」


「次」


「ス、スイマセン…」


「真琴の寝顔ってさー」


「?」


「いや…。別にいい」


電車内に駅名を告げるアナウンスが聞こえて2人揃って降りて。


駅から家まで15分程の距離に、あまり会話はなかった。


「じゃ、俺ここで」


「ハイ。今日はホントにありがとうございました」


「ん。あ、あのさ」


「…?」


「旅行…旅行じゃねぇな…あの、アレだ。出張!」


「出張…?」


「例の企画の北海道、出張、俺と真琴だから」


「えっ?メイ先輩じゃなくて?」


「う、うん」


「関口先輩でもなくて?」


「う、うん」


「あたし…ですか?」


「だからそーだって。2週間後、夏の北海道な。じゃ」


「あ。え…えぇっ!?」


陣主任は「オヤスミ」の一言も告げず、軽く手を上げた後ろ姿を見せて、小走りに去って行った。


陣主任と2人…。


北海道出張?


あたしなんかに務まるかな…。


うーん…不安…。


それでも支店長と主任が決めた事なら、あたしはその業務命令に従うしかないワケで。


陣主任が一緒だし…何とかなるよ、ね?
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