捨て猫にパン
「やめたら?」


「…え」


「俺、言ったよな?最後まで面倒見きれない無責任な優しさだ、って。そんな男に真琴は何期待してんの?」


「期待なんて…してません…」


「俺とソイツ、何が違う?」


何が違うか、なんて。


倉持さんと陣主任を比べたこともないのに、そんな相違点、見つけられっこナイ。


「1人で出勤できないなら、俺が迎えに行く」


「………」


「来週からな。わかったな?」


「あの…!」


「何?」


「大丈夫です…。来週からは、ちゃんと1人で会社来ますから…」


「ホントに?」


「ハイ…」


「そ。じゃ、俺、仕事戻るから。真琴、オマエはもう少しここで休んでろ。で、帰り、また俺が送ってくから」


「…ハイ」


───カチャ


ドアの閉まる音を背中で聞きながら、あたしはまた手の甲を強く噛んだ。
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