捨て猫にパン
「どうしようもなく焦るんだよ。真琴が“倉持”って名前を出すたび。こんなに近くにいたのに、こんなに想ってるのに、俺は真琴にとってただの上司ってカテゴリーでしか見られねぇ。もうさ、耐えられないんだよ」


緩んだ腕の力の中で、主任の右手があたしの顎を支える。


いつもと違う陣主任の瞳があたしを離さない。


あたしの唇に重なった陣主任の唇は。


キス、は。


覚悟のキス。


このキスを拒めないのは。


陣主任が真っ直ぐ過ぎるから。


その想いが見えてしまったから。


「今すぐ真琴が欲しい…!」


足に力が入らず、そのままソファーの上に重なるあたしと陣主任。


キスを浴びながら1つ1つはずされていくブラウスのボタン。


「真琴…」


熱い吐息と、あたしの名前を呼ぶ陣主任の切ない叫び。


苦しい…。


苦しいよ…。


脱ぎ捨てられたスカートはソファーの下。


肌に感じる陣主任の熱い体。


「いいよな?」


「アァッ…!」


返事を待ってくれずに1つになった身体は。


突き上げられるたび小さな悲鳴を上げて、果てては昇るを繰り返した───………。
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