捨て猫にパン
───………。


「ん…」


「真琴…?」


真っ暗な部屋と冷たいフローリング、包んでくれている大きな手。


あ…そうだったんだ…。


あたし、陣主任と…?


「朝まで目ぇ覚まさねぇかと思った」


「陣…主任…?」


「真琴、イッたきり戻ってこねぇから、ちょっと心配だった」


ヤ…。


恥ずかしいしっ…!


「あのさ、真琴」


「ハイ…」


「ゴメン」


「…え…?」


「告白するなりこんなことして、さ。真琴の気持ち、ちゃんと確かめもしねぇで…だから、ゴメン」


「…らないでください」


「ん?」


「…謝らないでください」


「真琴?」


「そんな風に謝られるの、ヤです。こういうこと…カラダ…全部否定されたみたいで…。陣主任、ウソだったんですか?」


「それはナイ。俺、ずっと真琴だけしか見てこなかったし、今も、これからも俺は真琴だけだ。ゴメン、て。取り消すからさ。だから、くれないか?」


「何を、ですか…?」


「真琴のこれから。つまり、アレだ、あのー…将来ってヤツを、さ」


「陣、主任…?」


「指輪もナシ、告白と同時にセックスで、俺、スゲー焦ってる感じで超カッコ悪りぃんだけど、今言わなきゃ真琴、他の男んトコ行きそうで。こんなプロポーズ、ヒク?」


「プロ…ポーズ…?」


「もうさ、こんな近くに真琴がいてこんな風に俺ん中いたら手放せねぇじゃん。だから俺に預けてほしい、真琴の全部。これから先、ずっと」
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