捨て猫にパン
自分で吐いたその言葉に胸が痺れた。


スキ、なのはただのあめ。


なのに心の動揺を隠せないあたしは、誤魔化すように笑顔を作って右隣の倉持さんを見上げた。


「なんか真琴ちゃん、いつもと違うね」


「え…」


「ここにいるのに、ここにいないみたい」


「そんなこと…」


「ナイ、って言えないね?」


「………」


嘘は、イヤ。


倉持さんに嘘は言いたくない。


だから黙って俯いた。


「朝顔一鉢買って、昼ご飯行こうか?」


小さく頷いて、倉持さんの手からほどけてしまった右手をただ見つめた。
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