捨て猫にパン
───カチャ


部屋の扉が開く音がして、あたしは慌てて電話を切った。


「真琴-、あんまん。こんなんでメシになんのかよ…って。───真琴…?」


「お、お腹空きましたっ」


「何で泣いてんの?」


「な、何でも…ないです…」


「電話?誰と?」


「友達…大学時代の友達が札幌にいて…」


「貸せよ」


陣はあたしからケータイを取り上げて、着信記録を見る。


「クラモチ カナメ」


「………」


「何?アイツと電話?俺に抱かれた後で?」


「違うんですっ!」


「何が?」


「あたし…あたし、ただ確かめたくて…」


「何を?」


「あたしは陣で…!倉持さんじゃない、って…。だから陣が考えてるような関係はなくて…あたしは陣だけに…!」


「俺だけに、何?」


「陣だけに…抱かれたい…」


今まで見たことのない冷ややかな陣の瞳を直視できなくて、あたしは頭まで布団を被って小さく震えた。


ビニール袋とわずかに布の擦れる音と同時に、ベッドの中のあたしに陣の体が乗る。


布団を被ったままのあたしを、陣は強く抱き締める。
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