捨て猫にパン
「なんで震えてんだよ…」


「ごめんなさい…」


「謝るな。否定されてるみたいで、ヤ」


「…っ…っ…。うん…」


「もう1回言えよ」


「ハイ…。あたしは…陣だけに…抱かれたい…」


「明日、仕事行けなくていい。俺に、俺だけに抱かれろ」


「…ん…っ…!」


激しいキスが繰り返されて、あたしの体は陣だけに染まっていく。


「呼べよ、俺の名前…!」


「ン…!アァッ…!陣!」


「真琴…!」


これでいい。


これで間違ってない。


あたしは陣に抱かれて、陣と将来を誓い合う。


でも、この声は…?


あたしの名前を呼ぶ声。


『…ちゃん』


ダメ、耳を傾けちゃダメ。


『真琴ちゃん』


どうして?


あたしが拒んでるのに、どうして響くの…?


『真琴ちゃん』


陣…呼んでよ…。


あたしを呼んで…。
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