捨て猫にパン
目が覚めると部屋は真っ暗で、サイドテーブルのデジタル時計は0:20をさしていた。


隣にはベッドにうつ伏せになった陣が寝息を立てていて。


こんな所に来てまで面倒かけちゃって…あたし、彼女失格かも…。


陣、ちゃんとご飯食べたかな…。


起こさないようにそっとベッドから起き、陣が買っておいてくれたミネラルウォーターに口をつけた。


まだ少しクラクラするけど、気分は悪くない。


ただ、泣き腫らした目頭がジンジン痛かった。


たくさん汗をかいたせいか、体に不快感。


入浴時間は過ぎてるけれど、フロントにお風呂場を借りる旨伝えて、軽くシャワーを浴びて部屋に戻ろうとするけど。


階段を上がる足が重い。


やっぱり陣には届かない、そんな気がして。


あたしはペンションの外に出て、ぬるい軽井沢の夜風に当たった。
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