捨て猫にパン
『もしもし?』


「………」


『真琴ちゃん?』


「ハイ…。あたし、です…」


『今、1人?』


「ハイ…」


『やっと繋がったね』


鼓膜をくすぐるその声に、スマホを持つ手が震えた。


どうしても言いたい一言があるくせに、あたしの喉はカラカラに乾いて。


何も声にならなくて。


ただ黙って倉持さんの言葉を待つだけの沈黙に、あたしはぎゅっと目をつむった。


『一言だけ言わせてほしくて、電話した』


「ハイ…」


『会・い・た・い』


───!!


心臓が、肺がもがくような感覚に苦しくなって、大きく息を吸って。


あたしは決して言葉にしちゃいけない感情を吐き出してしまう。


「あたしも…会いたい、です…」


『今から行く』


それだけ聞こえると通話はそれっきりで、スマホは光を消した。

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