隣の部屋のナポレオンー学生・夏verー
なるほど、男勝りな性格はさておき、あれくらいの容姿の女性でも振られると言うことはあるようだ。
いつの時代も、女は容姿だけでなく都合よさも見られてしまうと言うことらしい。
私には都合のいい女のどこが良いのか、まったく解せぬ。
やはり大和撫子なら淑やかなのがいい。
「まあ思い出して見れば、あの時のお前はまっこと無様であったなあ?
今思えば“ザマーミロ”だ」
「なに、あんたそれ喧嘩売ってんの?」
「我が輩、喧嘩売るのは得意だもん」
「なんか勝てた試しがなさそうな言い方ね」
「前半の戦とかちゃんと勝ったし?
我が輩の戦勝率は緋奈子の貧相なバスト数値と違って高いからな?」
「皇帝就任以降から転落人生だった人に言われたくなんかないわよ」
青年の方は幼稚な言い草であるし、対する緋奈子とやらは冷静な悪口を返している。
しかし、緋奈子の言葉はどうも気にかかる。
“皇帝就任以降、転落人生”
どこか覚えのある言葉だった。
もしや、と私は予感した。
この世この歴史の中で、国の皇帝というものは溢れるほどにいる。
しかし、緋奈子のような一般市民でも存じている皇帝というと、限られてくる。
教科書にその人生が乗るほどの、人物でなくてはならない。