隣の部屋のナポレオンー学生・夏verー
*
「鮭♪鮭♪」
彼はどうやら焼き魚が好きらしい。
ナポレオンは上機嫌で、弁当箱の中に詰められた鮭の切り身を突っついている。
以前は一週間クレープ(しかも具無し)生活を送っていたナポレオンだが、あんまり使わなくなった料理本をあげたら、瞬く間に上達した。
米と鮭しか入っていない弁当はさておき、前よりはうんとよくなった。
「鮭すきなの?」
あたしが訊くと、ナポレオンは骨を取り出しながら、
「それほど好きではないな」
と、テンションに似合わない答えを返した。
「ああ、でも。
鮭のムニエルとか、ああいうのは嫌いだが、普通にカリカリに焼くやつは大好きだぞ。
おにぎりの中に入れば、鮭は天下無双だな」
ベタ褒めである。
……ナポレオン、だんだん味覚が日本人ぽくなってきてるような気がする。
それとも生前の時代にもあったから、ムニエル食べ飽きてんのかな。