隣の部屋のナポレオンー学生・夏verー
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ナポレオンが資料室へと向かってから、あたしはどうも落ち着かない。
むろん、あんなに上機嫌で待田先生のところへ赴いたからというのもある。
でも、なんだろうな……。
あの資料室を1番よく使うのは待田先生だ。
新入生のあたしでも、数週間あたりでそれがわかるほど、待田先生は頻繁に資料室に出入りしている。
いわば、彼の部屋みたいなものだ。
それに手伝い以外で待田先生が資料室に人を呼ぶのは珍しいし、だからこそ、ナポレオンがそこに呼ばれたのは不思議で仕方ない。
本当にいいことなのか、悪いことなのか、待田先生の呼び出しの理由がわからない。
資料室がある棟の隣にある図書館で暇を潰していたあたしは、古いケータイ小説を仕舞う。
まあ……大丈夫でしょ。
ナポレオンも、細いとはいえ“男”だし。
……うん……大丈夫だよね……。
あたしが無理に納得しようとするほど、胸騒ぎは高まった。
なんだろう、悪い予感みたいな感じじゃない。
悪いどころか、むしろこの感じは……。
“萌え”
そう、あたしが中学時代から高校時代まで持ち続けて来た禁断の概念。
それがいま、この場に蘇って萌えを叫んでいる。