隣の部屋のナポレオンー学生・夏verー
大きな図書館の階段を駆け下り、何度か段飛ばしをしながら下まで到達する。
あたしは女っ気とやらを何処かに捨て去り、大股でかける。
ああ……。
あたし、もうヒロインの座をナポレオンに取られたかもしれない。
なにもなきゃいいんだけど。
けど、見るだけ。
これでもしなんかあったら、ナポレオンだって立ち上がれそうにない。
やばかったら助けに入らなきゃならないだろう。
あたしはいつぞやの日のことを想起する。
初恋が障壁の前にことごとく散った日。
あの時ナポレオンは、未練をひきずったまま復讐に乗り出そうとした、曖昧なあたしを助けてくれた。
ナポレオンには強がって忘れたって言ったけど……ホントは忘れてない。
ずっと鮮明に覚えてる。
だから(心の中に潜む腐女子なあたしがいることは別にして)、見過ごせない。
なにもなかったら、あたしは通り過ぎるだけにする。
そう心に決め、あたしは第一棟のドアをくぐり、一気に階段を上って行った。