隣の部屋のナポレオンー学生・夏verー
「昔に世話になったお方が、こうして可憐な姿に生まれ変わり、私の前に現れてくれるとは……」
待田先生の声にともなって、がたり、とパイプ椅子が大きく揺れる音がした。
ナポレオンか待田先生が、勢い良く椅子にぶつかったのだろう。
「お、おいっ……」
ナポレオンはたいそう狼狽した様子だ。
いや、まてまてまて。
おい、って言うほどのことってなに?
それにさっきの「がたり」って?
もしかしてこれ、ナポレオン追い詰められてる?
てか生前のあんたたちって、どんな関係だったの?
あたしの胸にファンタスティックな「あんなこと」や「こんなこと」の情景が広がってしまう。
そんな邪念を消し飛ばし、あたしは耳を済ましていた。
が。
「ずっとお聞きしたかったのですよ。
陛下、あなたに…」
「ひっ」
ナポレオンの押し殺した声と、色気を孕んだ待田先生の声に、あたしは耐えかねた。
もうなんか、声のシュチュエーションからしてそういうシーンにしか思えない。
生前なにがあったかは知らないけど、ほっといたら本気で「アーン♡」なことになっちゃうかもしれないし。