隣の部屋のナポレオンー学生・夏verー
さっきからそっちの匂いを漂わせる待田先生には、むしろあたしのほうが警戒してしまう。
「ふ」
待田先生があたしに一瞥をくれ、そうしたり顔で微笑んだ。
なにこれ。
なに、このヒロインを横から掠め取ろうとするイケメンの登場、みたいな顔は。
あたしはすでに待田先生の中では『ヒーロー』のポジションか。
いちおうヒロインなはずなんだが。
「……タイユラン、手は出すなよ」
「タレーランでございますよ。
何度言えばわかるんです?
陛下?」
待田先生は挑戦的に首を傾げて見せる。
この様子だと、生前からナポレオンは待田先生の名前を間違え続けてきたらしい。
手を出すな、とか、ナポレオンは心配してくれてるし、あたしもちょっと嬉しい気はする。
……けどあたしにしてみれば、色気たっぷりの待田先生の先にいるナポレオンのほうが、よっぽど心配である。
ナポレオン、狙われてるのはあたしじゃない。
たぶんあんただよ。
と、言いたくなる気持ちをぐっとこらえる。