LAST SMILE




パン―!!






乾いた音が、スタジオ内に響く。


あたしははっと我に返った。


祐兎が頬を腕で押さえていた。




あたし、叩いた?


混乱するけど、あたしの口は止まらなかった。






「なんで、そんなふうに言うの?」


「麗華・・・?」



「なんで死んじゃうんだって、決め付けるの?」






あたしは続けた。


だって、我慢できなかったから。





「なんで一人で勝手に準備なんかするの!?」


「なんだよ。どーした?お前なんか、変だぞ?」






「変じゃない!あたしのどこがおかしい?
 “どうせ”なんていってあきらめてるやつに
 怒って何がおかしいの!?
 


 生きようって足掻きもしないで、
 ただ亜貴にも、病気にも甘えて
 そんなくだらないこと言うなんて・・・。



 おかしいのはあんたのほうじゃない!!」








あたしはそれだけ言うとスタジオを飛び出した。



カバン、
スタジオに置きっぱなしだ・・・。


あるのはケータイだけ。


あたしは必死で走った。



この暗がりの中、必死で、
とにかく必死で。







自分が怖かった。





どうして、
あんなふうに言ってしまったんだろう。



どうして、
あんなふうに叩いてしまったんだろう。






祐兎は、決して
生きようと思わなかったわけじゃない。







しょうがなかったんだ。








きっと、祐兎につきつけられた現実は、
あの人が背負うにはあまりにも大きくて、







あまりにも残酷だった。









頑張らなかったんじゃない。





“頑張れなかった”だけなんだって。








わかってるのに。









わかってるはずなのに、





あいつの口から、









“消える”とか、






“いなくなる”とか、














そんな悲しい言葉を聞きたくなかったの。















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