LAST SMILE
あたしは祐兎の袖にしがみついた。
顔を伏せたまま、ただ言葉が飛び出てくる。
この場で、言っちゃいけない。
祐兎にいわれたじゃない。
“黙っててくれ”って。
亜貴にもいわれたじゃない。
“今までどおりに”って。
なのに、どうしてこんなこと、
言っちゃったんだろう・・・。
顔を、あげられない。
情けない自分に腹が立つ。
だけど、言うしかなかった。
言わないと、祐兎が無理をして
本当に死んでしまいそうだったから。
「お願い。無理しないで・・・。
あたしの前からいなくならないで!!!」
「麗華!!!」
「あたしは―!!」
パシ―
冷たい、乾いた音がする。
頬がひりひりする。
あたしは熱を持った頬を押さえた。
「黙ってろ。頼むから・・・」
「・・・なんで・・」
祐兎は叩いたあたしの頬をゆっくりと、
静かに撫でた。
祐兎の手で撫でられると、
痛みを忘れるくらいだった。
「はは。・・・んな顔すんなよ・・・
笑えって・・・言ったろ?」
笑えない。
笑えないよ?
あたしは、
あなたが元気でいてくれないと笑えない。
あなたが苦しんでるのに、
それを前にして、
何もせずに笑っていられない。
笑わなきゃ・・・
笑わなきゃ。
笑えっ!!!
「・・・ふっ・・・っ・・・く・・・」
「どうした?ホラ・・・」
「笑えないよ・・・。あたしは・・・、
あんたがそばにいてくれなきゃ笑えない!!」
「・・・・っ・・」
一瞬、祐兎が困ったように、
それでも笑ったんだ。
ほんの、一瞬だけ。
そして、
その大きな体がぐらっと揺れたのも、
一瞬だった。
「祐兎―!!」